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哀しみの歌声(スコット・ウォーカー・ベスト) [音楽]

 スコット・ウォーカーの名を知る者は、残念ながら今ではほとんどいないだろう。
 そういう自分でさえ、彼が活躍していた時代とリンクしていた訳ではない。
 しかし、時代が違えども、スコット・ウォーカーという歌い手がかつて注目を浴び、素晴らしい歌の数々を送り届けてくれた、それだけでも記憶に留めておくことも無駄ではあるまい。

 もともとスコット・ウォーカーはウオーカー・ブラザーズ(3人組)の一員として1965年にデビュー。もともとはアメリカのグループなのだが、イギリスで活動を開始する。次々とシングル・ヒットを飛ばして一躍大人気に。
 しかし、人気絶頂の67年、突如として解散。スコットはソロとしてデビュー。シングル・ヒットにも恵まれ、アルバムもヒットする。しかし、70年代に入ると時代の移り変わりもあり、次第に彼のバリトン・ボイスの歌声は古臭くなり、シーンから取り残されて行く。

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               『SCOTT WALKER the collection』

 この『SCOTT WALKER the collection』を聴いてまず思い浮べるのが、エンゲルベルト・フンパーディンクやトム・ジョーンズ、ニール・ダイアモンドといった、エンターティナー系のポピュラー歌手の歌声だ。落ち着いて堂々としたバリトン・ボイスは、70年代以降のロックを耳にした若者には、やけにオヤジ臭く響く。今聴いてもやはりそう思わざるを得ない。

 しかし、それを差し引いてなお考えさせるのがマニアックな選曲の数々で、ここが彼の真骨頂なのだが、英語圏のリスナーにとってはほとんど理解不能なのでは? と、つい老婆心の一つも起こしたくなってしまう代物なのだ。正直、これじゃあ売れなくなるよなあ・・・と、妙に納得してしまったりもする。

 その最たる例がジャック・ブレルのカバーの数々だろう。
 ご存知ブレルはれっきとしたフランスの歌手。シャンソンの歌い手としては最高の歌手だ。しかし、その味わいを英語圏の人間に聴かせても、ピンとはこないに違いない。それは未だにフランスはおろか、ヨーロッパの歌い手が、英米音楽界にこれといった足跡を残せていないことでも明らかだ。
 しかし、スコットはブレルの歌を歌い続ける。フランス語の歌詞をわざわざ英語に訳してまで。
 そんな曲の中でブレルの代表作であり、TAOの大好きな歌でもある『AMSTERDAM』の雰囲気を少々理解していただきたく、ここに紹介しよう。

 アムステルダムの港では
 世界中の海を渡り歩く夢を歌う水夫たちがいる
 ビールを飲み過ぎて酔い潰れ、ケンカをして立ち上がれなくなった水夫たちがいる

 アムステルダムの港では
 こんな水夫たちにお目にかかるだろう
 魚の頭としっぽだけを大口開けてムシャムシャと食べ
 たらくふ食って飲んだらゲップして
 笑いながらズボンのジッパーを下げて、しょんべんをする

 アムステルダムの港では
 楽しそうにダンスする水夫たちにお目にかかるだろう
 太鼓腹を突き出し、女たちにそれを押し付けるようにして踊る
 ウイスキーで荒れた調子っぱずれな声で下品なジョークを飛ばし
 アコーディオンが奏でるけたたましい音楽に合わせ
 好色なバカ笑いと共に、夜中まで踊り続けるんだ

 アムステルダムの港では
 水夫たちが浴びるように酒を飲む
 そこで客を引き、あらゆる男たちに<愛>を分け与える娼婦たちの健康を祝って飲む
 彼女らは自分の身体を安売りする
 ほんの数枚の汚れたコインの為なら、自尊心だって捨て去るだろう

 アムステルダムの港では・・・
 アムステルダムの港では・・・                         (要約・訳 TAO)

 猥雑な人間模様の中に、人の哀しさを見つめ、それでも愛さないではおけない、人間賛歌。
 ブレルは叩きつけるような激しさでこの曲を歌い切った。
 一方、スコットも深みのある歌声で、曲の持つエッセンスをしっかりと受け継ぎ、表現する。
 しかし、先にも書き記した通り、こんな歌詞がシャンソンの伝統を持たぬ人たちに理解されるとはとてもじゃないが思えない。
 その他のカバーや自作曲も陰鬱な曲が多く、次第にセールスにも見放され出し、いつしかシーンから姿を消してしまう。人一倍鋭い感性故、ポピュラリティから離れて行くのは、ある意味必然だったのかもしれないが・・・。

 PS.80年代以降は再評価され、今でも地味なれど活動しているのは喜ばしいことである。

タグ:ポップス
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コメント 3

みん姐

あ~~~~ん!!
スコット大好きだったな~~☆
「ダンス天国」を”ヤング720”という当時やってた朝の番組で
初めて聴いた(観た)当時を思い出します。私は小学生でした。。
ウォーカーブラザーズ・・・もしかして私が初めて好きになった洋物グループかもしれません。
ドーナツ版を買ったらますますスコットの美声に酔い、
B面の「イン・マイ・ルーム~~♪」(タイトル忘れた)がまた良かったな~~♪
その後、神経衰弱になって入院したようなうわさもあったけど
まだ頑張ってたんですか。嬉しいなあ・・聴きたい!

by みん姐 (2008-04-28 08:13) 

TAO

女性には "骨盤に響く声" なんじゃないでしょうか?
こういう声の歌い手って、今や絶滅状態ですね。男の声が年々カン高くなっているような気がするのですが。
このベスト盤は18曲収録されていて輸入盤で1300円くらいで、とってもお買い得です。
ちなみにジャック・ブレルのカバーだけを各アルバムから集めて一枚にしちゃったものも発売してます。
80年代以降、ロックの文脈から外れたアーティストへの風当たりはかなりキツイものがあったようで、一時溢れていたシンガー・ソング・ライターは軒並み不遇だったみたいですね。
ボクは割とそういう不遇なアーティスト好きなもので(笑)、彼のことも憶えてました。
いや、なかなか良いベスト盤です、はい。
by TAO (2008-04-28 22:14) 

TN

スコット・ウォーカーを愛聴するひとりです。実は、今回、聴くだけにとどまらず、誠に勝手な行為なのですがリミックス版を制作してしまいました。楽曲は「スコット・ウォーカーBBC・TVショー」に収録されている"If She Walked Into My Life"です。リミックスした楽器はアルトサックスで、演奏はストリートミュージシャンのつぼけんさんです。このリミックス版をユーチューブに投稿しようとしたのですがユニバーサルミュージック・ジャパンさんから許諾がおりませんでした。リミックスという複雑な権利問題を考えると当然なのでしょうが何とか公表してみたいと考え、皆様のお知恵とご協力を募ろうとクラウドファンディングのサイトOKDreamsに投稿いたしました。下記URLですが、ここで、とりあえず、皆様の「共感する」を募っておりますので、もし、アクセスいただけましたら最後にある「共感する」をクリックいただけると幸いです。唐突なお願いで大変失礼いたしますが何卒よろしくお願いいたします。

http://okwave.jp/okdreams/community/d8519067.html

by TN (2014-03-23 17:08) 

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