So-net無料ブログ作成

『賭博者』(前編) [書評]

                   0001_256.jpg
                     『賭博者』(新潮文庫版)

 大作『カラマーゾフの兄弟』以来のドストエフスキー作品、『賭博者』の登場!

 今回、なんでこの『賭博者』なのかというと、『カラマーゾフの兄弟』第3部後半で物語の中心人物に踊り出した長兄ドミトリーの、金策に走り回る、まるで熱病にでもうなされたかのような圧倒的迫力の "オリジナル" が、この『賭博者』にあるのではないかと考えたからに他ならない。

          ☆          ☆          ☆          ☆

 物語の設定は、とある外国の保養地。バカンスを兼ねて賭博場に遊びにやって来た将軍家とその知り合い連中は、老齢の伯母の死によって手に入るはずの遺産を今か今かと待ち侘びていた。人伝えに、様態はかなり悪くなっていると聞いている。それが手に入らないと、将軍は借金を返済するめどが立たず、窮地に陥り兼ねなかった。
 この物語の主人公アレクセイは将軍家の家庭教師として雇われ、将軍の義理の娘ポリーナに恋焦がれていた。しかし彼以外にもフランス人公爵デ・グリュー、イギリス人実業家アストリーも、ポリーナに恋していたのだった。
 ある時、伯母が元気な姿を宿泊先のホテルに見せた。悪態を散々ついた挙句、賭博場のルーレットにハマり、最初は勝っていたものの、最後には手持ちのお金をすべて吐き出してしまう。
 アレクセイはそのそばにいて、最初は冷静に観察し、アドバイスをしていたのだが、フランス人デ・クリューが金でポリーナの気持ちを自分に向けようとしたのを知り、ルーレットでの勝負に出たのだった・・・。

          ☆          ☆          ☆          ☆

 ざっとあらすじを記したが、登場人物が複雑に絡み合い、簡単に省略するのが困難なのは、いつものドストエフスキーの作品ならでは。将軍の借金の相手がデ・グリューだったり、将軍が結婚を申し込む相手のマドモアゼル・ブランシュなる、お金が大好きで、高い家柄に憧れる女性がいたりと、物語は多面的な性格を有しながら進んでゆく。

 この作品はドストエフスキーの実体験がかなり色濃く反映されているらしく、ポリーナとの近づくでもない、遠のくでもない微妙な関係の恋愛模様には当時の恋人との、また、物語の終盤、ルーレットにのめり込むアレクセイの気迫迫る姿には、ドストエフスキー自信の姿が投影されているようだ。実際に毎夜賭け事にのめり込み、散々すっては、知人に借金まで申し込んでやり続けたらしい。

 そんな話を聞くと、やはりまずは『賭博者』のタイトル通り、賭け事の場面に目が行ってしまう。
 金持ちの老婦人である将軍の伯母の登場、これが前半の山場。死にぞこないのはずが、ピンピンしての登場に、一同唖然とさせられる。このおばあさんが口が悪く、散々周囲の人間に嫌味を言いまくる。そうしてから主人公のアレクセイを引き連れて、ルーレットの前にドンと陣取る。
 おまけにルールもほとんどわからないくせに、賭け方がハンパじゃない!

 まず最初に、ほとんど来ることのない倍率35倍の「0」に賭ける。
          ↓
 3度負けるも、4度目に「0」が出て、儲ける。
          ↓
 また「0」に賭けて、なんと続けて「0」が出て、大儲け、次は掛け金の限度額まで「0」賭け、また儲ける。
          ↓
 今度は限度額を「赤」に賭け、見事「赤」に的中!

 召使いや貧しい者に金貨を与え、いったん宿泊先に戻るも、再度賭博場に繰り出し、賭け続ける。
 しかし、ツキはそういつまでも味方してくれはせず、最後には儲けた金どころか、手持ちの金もすべてすってしまい、ほとんど一文無しになってしまう。

 隣でアドバイスしていたアレクセイは、老女の大胆な賭け方と、見事数を的中させた時の金の動きに魅了される。これまで、半ば賭け事など馬鹿にして、大きな勝負もしたことがない自分が、実は彼女と同じ「賭博者」(賭博に魅せられた人)であることを自覚する・・・。


 長くなったので、後編に続く・・・。 

  
タグ:ロシア文学
nice!(1)  コメント(4)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 4

lplp

 どなたかが、この作品をFXに置き換えて読んでみるといいといっていました。でも、ルーレットとFXは違い過ぎと思います・・・・。どうでもいい。
 ドストがルーレットにはまっていたことは、最初、信じられませんでした。ええーー!!ですよ。あんな人が。
 この作品意外と面白いです。半分以上読み終えました。もうすぐ終わり!?という感じです。
 考えてみれば、パチンコと同じだと思います。
 話は変わりますが、パチンコの嫌いなところはうるさいところです。トイレに用で行ったら、うるさい、うるさい!!!もう一生行きたくないです!人間の理性を失わせてしまいますしね。

by lplp (2008-07-21 15:38) 

TAO

lplpさん、初めまして。
ドストエフスキーのちょっとマニアックなこんな小説を楽しんで読んでしまうなんて、かなりの<通>とお見受け致しました。
後半、どんどん面白くなって行きますので、期待していて下さいね。
人間には賭け事にハマる人とそうじゃない人の2種類存在します。自分がどちらなのかをちゃんと把握しておくことは、その後の人生において、とても重要なことです。
ボクもずいぶん前にはパチンコ愛好家でしたが、そもそも自分が賭け事に対して、それほど熱くならない性質だったので、じゃあなくてもいいやと止めてしまいました。
朝の通勤時に開店前のパチンコ店の前を通るのですが、lplpさんのおっしゃる通り、早くも景気のいい音楽が大音量で流れていて、いい加減にしてくれ! と、思ってしまいます。
あの音楽で理性を抑え、アドレナリンの大量放出を促すんですね。
by TAO (2008-07-21 21:23) 

SABORU_1001

こんにちは、賭博者20年くらい前に読みました
0の魅力に狂う老女が印象的ですね
私、この夏にマカオでルーレットしまして、負けていた後に最後に36一点賭けを連発で取り逆転勝利で即ヤメて成功しました。パチンコをはるかに上回る興奮と緊張感、たまりません。
記事にも書いているので宜しくです
by SABORU_1001 (2012-10-18 07:35) 

TAO

SABORU_1001さん

マカオでルーレットって、まったくもって本格的じゃあないですか!
ボクもルーレットを(気取って)やったことはありますが、なかなか1点賭けは出来ませんよね。それも連発でとは、、、。
まったくもって<強運>の持ち主としか思えませんな。
羨ましい限りです。
もうずいぶん昔、渋谷のとあるビルの地下に、ルーレットとかカードとかやらせてくれる店があり、何度か行きました。
入口でチップを買い入場。中はバニーガールとかいて、アメを配っていたり、怪しげな雰囲気ながら、でも健全な店でした。
by TAO (2012-10-18 23:37) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。

×

この広告は1年以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。